20号程度の大作が並ぶ中で4号程度の異例ともいえる小さな作品を普通なら見過ごしていくのをほめてくださる方が多くいた。当番で会場にいる時初めて会場であった方からいろんなお話を伺うとともに説明をさせていただいた。元職場の大先輩からはわざわざ家に電話をしてこられました。
考えてみるに、分かりやすさが功を奏したのかもしれない。「ぶどう」は実の重なりを立体的に見える工夫をし、葉などは水墨画的処理をした。すなわち葡萄の果実に焦点を合わせ他はぼかした。「さくら」は一本の枝に焦点を合わせその他の処理を極端なまでにぼかしを入れた。デジタルカメラ以前の銀塩カメラで撮影したような効果を狙った。
一般的に言って公募展の展覧会での作品を見ても遠景の細部まで描きこんでいる作品が実に多い。しかし描かれた作品の多くは写真に忠実に、そして最近の写真は細部まではっきり写っているので事細かく描いている。そこには絵葉書のような美しい風景があるが、物足りない。細密さには驚かされることが多いが感動がない。
当然私も気に入った風景の写真を何枚も収めそこから風景を再構成し、その時の感動を気分を雰囲気を空気を描こうとする。いったん心のフイルターを通して省略と強調、追加と捨てること、など複雑な手続きを経ている。其の上でそのことをうまく表現できる手法を日々考えている。特に大きな作品を手掛けるとなるとその傾向は顕著となる。部分的な写実と大胆な省略を併せ持った作品作りを進めていきたい。